いつどのように、私たち人間のような「生命体」が誕生したのでしょうか?
正確なことは未だに分かっていません。しかし、約40億年前とされる生命誕生から今日に至るまで、小惑星の衝突や大規模な火山噴火、気候変動を経てもなお、「生命」はその火を途絶やすことはありませんでした。
どうしてこのようなことが可能だったのでしょうか?
それに対する重要な答えが「ガイア仮説」の中にあります。NASAに勤務していた大気学者、ジェームズ・ラブロックが提唱したこの理論は、地球自体を自己調節システムを備えた「巨大な生命体」と捉え、生物と環境の相互作用がそのシステムに組み込まれたものであるとする説です。
この説によれば、地球はそれ自身が精巧なシステムを備えているため、地球環境への不必要な人為的な介入は避けるべきとのこと。
1960年代にラブロックがその理論を提唱したとき、他の科学者たちは、その斬新な理論を全く認めようとしませんでした。全体論的なガイア仮説は科学的な検証が不可能であったからです。
その後理論の強化を続け、しだいに「科学的な理論」として議論の対象となっていったガイア仮説ですが、その理論を裏付けるものを完璧に説明することはできませんでした。
しかし、エクセター大学の科学者らが新たに提唱する理論によって、そんなガイア仮説をついに説明できるかもしれません。その新たな理論は、ガイア仮説によるメカニズムを「連続した選択」として捉える考え方です。
https://www.cell.com/trends/ecology-evolution/fulltext/S0169-5347(18)30118-6
その原理は非常にシンプル。すなわち、環境を不安定にする生命は長く栄えることができず、そのことが地球にさらなる「変化」をもたらし、環境が安定するまでそのサイクルが続いていくといったものです。
環境が安定すれば、さらなる生命の進化の準備が整ったこととなり、生命と地球の新たな相互作用がスタートすることになります。そしてその相互作用が定着すれば、地球が「自己調節」をはじめるのです。
しかし、その新たな相互作用が思わぬ混乱を引き起こすことがあります。例えば35億年前、地球に酸素は存在していませんでしたが、藍藻(シアノバクテリア)が光合成をはじめて以来、大気中の酸素濃度は急激に上昇し、約23億年前の「大酸化イベント」を引き起こします。
この時期は地球の歴史の中でも「レア」な時期とされ、この期間に酸素を嫌う生物が大量に絶滅する一方で、酸素を活用する複雑な生命体が繁殖可能な環境ができたとされています。すなわち、地球がそのシステムを効果的に安定させるために「再起動」を行なったようなものなのです。
ガイア仮説と、近年の気候変動との関係を無視することはできません。人間がどのような活動を行おうと、生命が途絶えることはないでしょう。しかし、人間がこれからも温室効果ガスを排出し続ければ、私たちは深刻な気候変動のリスクにさらされます。その結果、地球が「自己調節機能」を用いて環境を安定させるかもしれません。その「自己調節」とは、もちろん「人類滅亡」を意味しています。
生命が誕生してからの約40億年間で、数え切れないほどの「種」が現れては消えていきました。私たちホモ・サピエンスがその「例外」であるとは考えにくいと思いませんか?
via: theconversation, phys.org / translated & text by なかしー