なぜ人々は関節痛の悪化を天気のせいにするのか
フェレイラ氏らは、人々が関節痛の悪化を天候の影響だと考える理由について、次のように説明しています。
「天候は、他の要因や行動に影響を与え、それが患者の痛みの認識や管理にも影響を及ぼします」

例えば、冬だけは運動習慣が変わって、ジムで運動するよりも、ソファーで過ごす時間が増えるかもしれません。
長時間座っていると腰痛を悪化させるため、これが原因で「冬は痛みが増す」と感じる可能性があります。
さらに、寒すぎたり暑すぎたりすると、睡眠の習慣が変化したり、眠りが浅くなったりするものです。
寝不足は腰痛や膝痛の引き金になることがあるため、これが直接的な原因かもしれません。
寒さや雨などが直接的に関節痛を生じさせるのではなく、寒さや雨の影響で私たちの行動が変化するため、それが関節痛を生じさせている可能性があるというわけです。
さらに研究チームは、「冬には痛みがひどくなる」と信じ込むことで、ノセボ効果(プラセボ効果の逆)が生じているかもしれないと指摘しています。
では、実際に冬に関節痛が増しているように感じる場合には、どうすればよいのでしょうか。
研究チームは、天候など自分でコントロールできない要素ではなく、自分でコントロールできる要素に注目することが大切だと述べています。

例えば、1年を通して(たとえ冬であっても)、もっと歩いたり、体を動かしたりするよう意識できます。
また体重の増加は関節に負担をかけるので、「食欲の秋」や「体型が隠れる冬」でも、適正な体重を維持できるよう努力すると良いでしょう。
また寒い部屋では眠りが浅くなりやすいため、冬場は特に、寝室を温かい状態に保つよう意識することも有効と考えられます。
この研究結果は、私たちが常識だと思っていた「天候と関節痛」の説に一石を投じるものです。
もちろん、この研究だけで、これまでの主張やメカニズムの解説が完全否定されたわけではありません。
それでも、自分の痛みの本当の原因を探るきっかけにはなるでしょう。
「天候が原因だからしょうがない」と考えるのではなく、自分の行動が関節痛の悪化の原因となっていないか、改めて自問してみると良いかもしれません。