知らず知らずのうちに注文をしている

分析の結果、高BMIのスタッフが注文を担当すると、客はデザートを約4倍多く注文し、アルコール飲料の注文数も約17.65%増えることが分かりました。
またデザートとアルコール飲料はスタッフのBMIの影響を受ける一方で、サラダやスープはスタッフのBMIによって変わらないことも確認されています。
もちろん注文客のBMIが高いとより料理と飲み物を注文をする傾向がありましたが、注文客のBMIが低い場合も高い場合も、スタッフのBMIが高いとよりデザートを注文をする傾向があったのです。
この現象は、スタッフの体型を無意識に見て「この人もこれくらいだから、自分も少しぐらい多めに食べても大丈夫だろう」という安心感を得ていることで生じている可能性が考えられます。
この現象は「モラル・ライセンシング効果(licensing effect)」と呼ばれています。
しかしスタッフを男女別でより詳しく見てみるとこの現象には違いがありました。
アルコール飲料については性別に関係なくスタッフのBMIが高いと注文数が増えましたが、料理の場合は女性のスタッフのBMIが高くても注文数は少なくなったのです。
なぜ女性のスタッフの場合にはモラル・ライセンシング効果が生じにくいのでしょうか。
それは社会的な理想の体型が関連していると考えられます。
一般的に、社会が女性に求める理想的な体型は、男性よりもスリムである傾向が強いです。
この無意識のバイアスが、客の心理に影響を与えている可能性があります。
それはスリムな女性スタッフを「健康的で規範的」だと無意識に認識する一方で、理想とされる体型から外れた女性スタッフを見ると、無意識のうちに「自分も食べすぎないようにしよう」という抑制的な心理が働くからだと考えられます。
しかしこの研究結果は、肥満の多いアメリカでの調査に基づいています。
そのため、同様の傾向が日本でも見られるかどうかは、一概には言えません。
例えば、ダイエットをしていて食べる量を決めている人にとっては、店員の体型が注文に影響を与えることは少ないでしょう。
しかし、前述した通り多くの人にとって食事の選択は、その場の雰囲気や他者の存在に無意識のうちに左右されるものです。
もし、あなたがお店で何かを注文する際に、いつもより少し多く頼んでしまうことがあるなら、それはもしかしたら、注文を取る店員の体型の影響かもしれません。