光のドップラー効果
今回のNASAが公開したM90が地球へ向かっているという観測にしろ、ハッブルの行った宇宙の膨張にしろ、地球から観測しただけでなぜ天体の移動速度や方向がわかるのだろうか?
夜空の星を見ても、動いているかはさっぱりわからない。事実、アインシュタインもかつては「宇宙は静止している」と言っていた。もちろん後で訂正したが。
わずかな移動速度の場合、観測ではっきりとその移動を補足することは困難かもしれない。しかし、光速(秒速30万キロメートル)の何分の一というような、飛んでもない速度で地球から離れたり近づいたりしている天体については、ある現象を利用することで知ることができる。
それが光のドップラー効果だ。ドップラー効果については街で救急車に出会った際、近づいているときと、通り過ぎた後ではサイレンの音の高さが変わるという説明で耳にしている人が多いだろう。
音の高低は音の波長で決まっている。音を出すものがこちらに近づいていれば音の波長は縮まり、離れていけば音の波長が広がる。それで物理的に音の高さが変わるわけだ。
この効果は光にも適用できる。光も波の性質を持っており、波長が短いと青色に、波長が長いと赤色に見える。
光速に近い速さで遠ざかっていく天体を地球から観測すると、光の波長が伸びてその天体は赤色にずれて見える。逆に地球に近づく天体は波長が縮んで青色にずれて見えるのだ。
天文学者の間では、この効果についてこんなジョークがある。
先日、知り合いの天文学者が運転中に信号無視で警察に捕まったんだ。急いでいた彼はそこでこう言い訳した。
『僕の車は赤信号に向かって高速で移動していたから、青方偏移が起こって信号が青に見えてしまったんだ』
すると警察はこう言った。
『なら仕方ない。信号無視については見逃そう。代わりに時速2億キロメートルの速度違反だ』
ってね! HAHAHAHA! ゲッツ!