甲殻類は素早くナノプラスチックに分解できる
研究の対象となったのは、アイルランドの小川で見られる長さ2cmの小エビに似た淡水甲殻類「ガマルス・ドゥエベニ(Gammarus duebeni)」です。
この非常に一般的な甲殻類が、マイクロプラスチックを4日(96時間)未満でナノプラスチックにまで分解することを発見したのです。
ちなみに、この甲殻類は河川、海洋で世界的にみられる200種以上のガマルス種の1つであるため、新しい発見は世界的にも同様の現象が起こっていることを示唆しています。
研究では、ペットボトルなどに利用されている一般的なポリマーが使用され、マイクロサイズのビーズへと形成。
これらのビーズは蛍光色素によって着色されているため、甲殻類の摂取や断片化を顕微鏡で追跡できます。
そして、水中にマイクロビーズを投入したところ、甲殻類によって摂食され微粒子サイズにまで断片化されると判明しました。
また、甲殻類の胃腸で見つかったマイクロプラスチックのうち66%は既に断片化されており、この断片化は摂食プロセスと密接に関連していることを示しています。
カルデナス氏によると、「甲殻類がプラスチック粒子を摂取し、それらを顎で砕いてから消化器系へと渡すことが分かりましたが、実際の断片化メカニズムははっきりと分かっておらず、更なる調査が必要です」とのこと。
プラスチック分解のプロセスを解明するには更なる調査が必要ですが、水中にあるマイクロプラスチックはこれまでの予測よりもはるかに迅速にナノサイズにまで分解されていることになります。
今回の研究は、ナノプラスチック問題の緊急性を提示するものとなりました。
私たちが意識していないだけで、水中生物は微粒子サイズのプラスチックをどんどん生み出しており、人間は魚介類や鳥類を通してそれらを細胞内に取り入れているかもしれないのです。
この研究は7月30日、「Nature」誌に掲載されました。
Rapid fragmentation of microplastics by the freshwater amphipod Gammarus duebeni (Lillj.)
https://www.nature.com/articles/s41598-020-69635-2