毒虫が互いに似せあう「ミューラー型擬態」とは?
毒のある虫たちは、からだの色や模様など、「毒があるよ」という何らかのシグナルを持ちますが、それが効果を発揮するには一定の個体が犠牲にならないといけません。
これが別の毒虫でも起こると、毒虫の種類の数だけ損失は大きくなります。
ところが、複数の毒虫が手を組んで、互いに見た目を似せ合っていれば、犠牲になる数は大幅に減少します。
これが「ミューラー型擬態」です。
例えば、不味いラーメン屋があったとして、その店のラーメンを食べた客は「二度と行くまい!」とかたく決意します。
そこでまた別のラーメン屋に行くのですが、最高のラーメンに出会うまでには何度か同じ目にあわないといけないかもしれません。
しかし、不味いラーメン屋の店舗名がすべて同じなら、痛い目にあうのは一回で済みますし、その分、犠牲者の数も減ります。
ミューラー型擬態はこれと同じ仕組みです。
具体的に、日本のスズメバチは同じ地域に4〜5種いますが、どれも黒とオレンジの縞模様で、とても似ています。
違う種のスズメバチがお互いに似せあうことで、犠牲となる数は大きく減り、襲われるリスクも低くなるのです。
身のまわりを見てみれば、大半の昆虫は何らかのモノマネや死んだふりができます。
ひ弱な昆虫が自然界で生き残るには、こうした工夫が必須なのです。