プラセボ効果の正体を探る研究が活発になってきている
1955年、何の効果もない偽薬であっても、効果があると信じ込むことによって病気の症状が改善することがはじめて報告されました。
人間の思い込みの力は凄まじく、何の効果もないはずのプラセボ(偽薬)は一般的な風邪症状にとどまらず、認知症や脊椎損傷、脳腫瘍といった難病の症状に対しても、一時的な緩和効果を発揮します。
そのため新しい薬の認証試験ではプラセボとの比較を行うことが一般的であり
「プラセボより有意な効果がない=薬として効果がない」
という式が成立しています。
しかし近年になって、プラセボ効果の中身を探求する試みが活発になってきています。
プラセボであっても効果を発揮するからには、私たちの体内では何らかの生物学的反応が起きているはずです。
そこでウィーン大学の研究者たちは、プラセボによる鎮痛効果の正体を探る試みを行いました。
アセトアミノフェンやオピオイド系などの鎮痛薬には、自分の痛みを減らすと同時に「他人の痛みに共感できなくなる」という奇妙な効果が知られていました。
そこで研究者たちは被験者にプラセボ鎮痛薬を与え、他人の痛みに対する共感能力の変化を調べることで、プラセボ鎮痛薬の正体を探ることにしました。
すると驚きの結果が判明します。