光でマウスの記憶を消すことに成功! SFの世界に一歩前進!
映画「メン・イン・ブラック」では閃光を放つと同時に記憶を消す装置「ニューラライザー」が登場します。
映画では、この記憶消去技術はエイリアンとかかわった一般人の記憶を消去し、エイリアン来訪の事実を社会から隠すために使われています。
映画の超技術がどのような仕組みで動いているかは定かではありませんが、記憶を消すには原理的に、記憶形成にかかわったニューロンを破壊するか、ニューロン同士の接続点(シナプス)を断ち切る必要があります。
今回、京都大学の研究者たちは光とイソギンチャク由来の遺伝子を用いて、マウスの短期的な記憶にかかわった神経接続(シナプス)のみを消すことに成功しました。
このイソギンチャクに由来する遺伝子はスーパー・ノバと名付けられており「光に反応して活性酸素を放出させる」という珍しい機能を持っています。
研究者たちは、このイソギンチャクの遺伝子を無害なウイルスに組み込んで、マウスの脳に感染させました。
ウイルスが感染すると、ウイルスの遺伝子とともにイソギンチャク由来の遺伝子「スーパー・ノバ」もニューロンに入り込み、光によって活性酸素がニューロンの内部で生産されるようになります。
活性酸素は毒としても知られていますが、量を適度に調節することで、新たに作られつつある神経接続(シナプス)を穏便に解消させる手段になるのです。
神経接続(シナプス)はニューロンの形が変形して、両手の拳を正面から合わせるような形に変形することで作られます。
しかしスーパー・ノバに光があてられ活性酸素が発生すると、この特徴的な形を形作る力学的な支えが失われ、形成されつつある神経接続(シナプス)が解消されてしまうのです。
記憶とはニューロン同士が接続することで形成されるため、特定の神経接続(シナプス)が解除されれば、該当する記憶は失われます。
イソギンチャクの遺伝子を組み込まれたマウスの脳はいまや、光をあてるだけで新規の神経接続が解除される極めて特殊な状態になりました。
問題は、マウスの脳のどこに、どうやって光を届けるかです。