航空力学の分野からも魅力的なトビウオ
体が軽いため、飛行できる
ヒレ以外にも、トビウオが飛ぶことができる理由があります。それは、「体の軽さ」「体の形」が関係しています。
まず、当然体は軽くないと飛ぶことができません。
トビウオは、そもそも消化しやすい甲殻類の大型プランクトン、カニ、多毛類の幼生などを食べます。無胃魚であり腸も直線的で短いため、すぐに消化して排泄をします。
ちなみに、身近なメダカ、サンマ、イワシなども無胃魚です。プランクトンなどの小さな生物を食べる魚に多く、決して魚界としては珍しい構造ではありません。
つまり、食べ物を体内に長時間溜め込まないようになっているため、体重を軽く保てるのです。また、「体に余計な脂肪が無いこと」も軽量に貢献しています。
お陰で、私達人間にとっては「脂っこくない美味しい食べ物」としても認識されているのは、何とも皮肉ですね。
鳥類と同じように、「骨密度が低いこと」も、軽量化に一役買っているようです。
軽量ということだけでなく、その体型にも秘密があります。
見た通り細長い円筒形をしていますが、これは空気の抵抗を減らすことに貢献しています。航空機や新幹線のようなフォルムをしていることにも、理由があったのですね。
トビウオの飛行メカニズムの、人間社会への応用
科学技術分野には、「自然界の物を模倣して、人間社会の産業に利用しよう」という「ネイチャー・テクノロジー」という分野があります。
特に、生物を模倣して産業機械を作ることを「バイオ・ミミクリ―」と言い、その学問分野を「バイオ・ミメティクス」と呼びます。
この分野で有名な例としては、古くはレオナルド・ダ・ヴィンチが鳥の飛翔の様子を観察して、飛行機械を設計した話などがあります。
このバイオメミティクスが、トビウオに関しても期待されています。
既に「良く飛ぶ紙飛行機」や「浮いて走る乗り物」の研究の際には、トビウオを含む様々な生物の飛行システムが参照されているのです。
今後、航空機など何らかの乗り物に、トビウオの飛行システムが応用されるかもしれません。
もしも、水面スレスレを飛ぶ乗り物などが開発された際には、きっと我々は食用として以外にもトビウオに感謝するのかもしれませんね。