孤独は権威主義台頭の主要因になる
孤独は権威主義台頭の主要因になる / Credit:clip studio . 川勝康弘
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孤独は権威主義台頭の主要因になる (3/3)

2025.05.21 18:00:27 Wednesday

前ページ孤独が社会を攻撃する理由

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社会的免疫を再構築する実践

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Credit:clip studio . 川勝康弘

孤独がこれほどまでに個人と社会を蝕むものであるなら、私たちはどう向き合えば良いのでしょうか。

幸い、孤独の問題に対して世界各国でさまざまな革新的な試みが始まっています。

その一つが医療とコミュニティを結ぶ新しいアプローチである「社会的処方(ソーシャル・プリスクリプション)」です。

例えばイギリスの一部地域では、医師が孤独を感じている患者に対し、薬の処方箋を書く代わりに地元のサークル活動やボランティア団体を紹介する取り組みが行われています。

ガーデニングクラブへの参加券や美術館の無料招待券が「処方」されるケースもあり、実際に不安や孤独感の軽減に効果を上げていると報告されています。

特に自然の中でのグループ活動を促す社会的処方プログラムでは、参加者の不安が有意に減少し、幸福度が向上した例が見られます。

薬に頼るだけではなく、人と人との結びつきを「治療」に活用するという発想は、まさに孤独による慢性炎症に対する社会的な特効薬と言えます。

実際、地域社会での交流や奉仕活動に積極的な人ほど、健康状態が良く幸福感が高いという研究報告があります。

こうして人とのつながりが回復すれば、互いへの信頼感も蘇り、怒りや不安に支配されにくい社会が実現しやすくなるでしょう。

これは社会全体で見れば「免疫力の回復」にほかなりません。

ハンナ・アーレントは、どれほど孤独が深刻化したとしても、それは「可逆的(reversible)」な状態だと論じています(※アーレントの著作全般からの趣旨)。

つまり、人々が連帯して共通の世界観や信頼関係を取り戻すことができれば、社会は健全さを回復できるのです。

孤独による慢性炎症に対処し、人々のつながりという名の治癒力を最大限に引き出せるかどうかが、今後の民主主義社会の方向性を左右すると言っても過言ではありません。

幸い、世界各地で始まったさまざまな挑戦は、孤独に苛まれた社会にもなお希望があることを示しています。

孤独という見えない炎症を癒やすことが、人々の健康と自由な社会を守る鍵になるのです。

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孤独は権威主義台頭の主要因になる (3/3)のコメント

ゲスト

孤独もぶっちゃけ慣れなので。

    ゲスト

    要エビデンス

ゲスト

その割には欧米の上流階級はDEIや環境保護を権威化して暴走してるじゃん
結局は孤立すると「独自の権威」に執着するからう浮くだけで、多数派や権力側の掲げる権威は「否定してはならない」と誤魔化してるに過ぎないと思うけど
自分が関われば常識で、無関係なら権威主義とかただのダブルスタンダードだよ

ゲスト

前半の医学的炎症反応の話と社会の炎症の繋ぎが強引すぎる。前半部分はなくてもいいのでは?
それを抜いても面白い考察だと思います。
現状でも子供の列に突っ込む無敵の人が増加し、外国人による日本のシステムへのただ乗りがクローズアップされる環境下では、ヒトラーのような独裁的指導者が現れたら無敵な人たちは団結し、先鋭化するかもしれません。

ゲスト

いつもみたいに新しい論文を紹介しなきゃいけない訳でも無いし、この記事はテーマとしては面白いけど、中途半端な突っ込み方するなら読者としては専門書の紹介文とレビューを読んだ方がまし。例えば孤独が精神衛生上良くない生理学的理由はロピンダンバー(「宗教の起源」など)、孤独になり易い社会とそうでない社会が有る事はエマニュエルトッド(「我々はどこから来てどこへ行くのか」など)がお勧め。ハンナアーレントを挙げただけではなぜ日独が全体主義化し易い孤独な国民性なのかが説明できないけどトッドは権威主義「直系家族」社会だからという理由を加えられている。
みんなよく漠然と「日本はムラ社会だ」と言ったり「今はそうじゃない」と言ったりするけど、パントーフランチェスコは日本は集団主義なのに孤独社会だと言っている。ムラ社会≒共同体社会であっても元々孤独傾向が強かった、それもやっぱり直系家族社会だからだし、電車で席譲らなかったり、面識無い人とはパーソナルスペースを可能な限り遠く取って余所余所しくするのが礼儀だと見做したり、上下関係にもこだわるのもだいたいそれ。本心は対等な地位の相手にしか晒さないものなのに先輩後輩とか言い合って上下関係を設けてたら孤独感が増すのは当たり前。女はそうでもないけど男社会はサル社会見てれば分かるように元々権利が不平等になりやすいから特に地位の上下を設けたがる。舞田敏彦「悩みを相談できない日本の子供たち」記事のグラフでも6か国の中で権威直系社会である日韓独の3か国が孤独感が強く、特に日本男性の孤立度が極端に高いのが分かる。日本の中でも沖縄だけは中国の影響で平等家族社会だから、一番貧しいのに幸福度は高め(データ機関による)。内地人が沖縄台湾に旅行して現地人がフレンドリーだと感じる理由がそれ。
他に水稲圏は集団主義で麦圏は個人主義説がある。水稲は灌漑工事が必要→協力と協調が必要→自己主張が悪→空気を読むのが美徳とされるように社会を優先する事で個人の幸福感はトレードオフ的に犠牲になる。他に古い社会程血縁社会になり易く、血縁社会は内集団と外集団を区別差別する意識も強い。隣村の住人とか移民とかに対して排外的で居る事は共同体全体が孤独になりやすい事にも繋がる。その二つが日独の違いで、ドイツは今は戦前ほど孤独でもないのに対して日本は戦前より孤独になっている。
デュルケームは自殺し易いのは都市部独身プロテスタントと言っててそこは日独で同じ。日本はプロテスタントではないけど世俗性と言う点では同レベルなのはイングルハートウェルゼル世界文化地図の通り。
アリスエヴァンスは世界中でここ10~15年で男女分断が強まったのはsns等のエコーチェンバーのせいだと言ってるけど、俺はそれ以上に新自由主義の45年もの継続で権利と経済の格差が開いた事が大きいと思っている。権利格差は数値化し難いけど経済格差ならトマピケティのworld inequality databaseが分かりやすい。日本で経済格差が最も小さかったのは終戦時で、大戦は金持ち同士で富をぶつけ合って溶かすから貧困層との格差が結果的に縮まる。欧米では1960年代のニューエイジブームなどで国によっては格差が最も小さいのが1970~80年代だったりするけど日本は背負う戦時からまた格差競争を開始してそのままでいる。60年代の世界的左翼思想ブームも日本の格差を縮小させなかったのはやはり日本の国民性が権威主義直系家族社会で右寄りで孤立と不平等が好きで差別的な社会だったから。当時左翼活動に加わった人たちの多くが「右翼より酷かった」と後悔しているけど、それは左翼が悪いというより右寄りな国民性の国では左翼集団にはろくな人材が集まらなかったせいとも言える。社会主義が好きな平等家族社会は孤独にはなり難いけど、そこに権威主義が掛け算されると強権独裁者を生み出してしまう。平等が好きでも権威者は嫌いな国がフランスで、デモが大好きなのもそのせい。日本は正反対で権威と孤独が好き。よくヨーロッパに移住した日本人同士で「フランスとドイツは全然違うよ」と如何にも現地社会を自分が一番よく理解してるアピールし合ったりするけど、彼らの99%は社会学や人類学には興味無いからどうしても主観に留まってしまうし、漠然と感じてる事が正しくてもそれをどう言語化して良いか分からないし、なぜ国民性が違うのかも掘り下げられない。本来は社会科学全般なぞらないと説明しきれない事なんです。

ゲスト

アーレントのは別に検証されたわけでもないし他の事に関しても権威主義と因果関係をイコールで結びつけれないガバガバ

ゲスト

社会的な繋がりが少なく孤独なのに、孤独感をあまり感じない人もいるし、社会的な繋がりが多いのに孤独感を強く感じる人もいるでしょう。社会的な「孤独」と、精神的な「孤独感」は峻別して表記・研究したほうがいいのではないでしょうか。

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