蜜の部分が意外に薄味な理由
蜜入りリンゴは、普通のリンゴに比べて香りが強く、高価なリンゴとして知られています。
しかし研究対象としての「蜜」への関心度は世界的にみても高くありませんでした。
そのため細胞レベルでの、蜜形成の仕組みを調べた研究は存在せず、蜜の部分で何が起きているかは、謎につつまれていたのです。
そこで愛媛大学の研究者たちは、細胞の水の動きとさまざまな成分を同時に計測可能な特殊な装置と2種類の浸透圧計をを用いて、蜜部分の分析を行いました。
結果、通常のリンゴ果実は、中心部のほうが外延部よりも細胞内部の水の圧力(膨圧)が高いのですが、蜜入りとなるリンゴではこの関係が逆(内側の水圧が低く外側が高い)となっていたと判明しました。
そのため蜜入りとなるリンゴの場合、時間がたつにつれて、外部から中心部へ水が流れ込んでいました。
結果として、蜜部分の甘さは水で薄められて低くなってしまいます。
蜂蜜のような甘さを期待して、蜜の部分だけを食べた経験がある人ならば、蜜部分が意外に薄味で水っぽいという感想を持ったと思いますが、科学的にも正しい評価だったわけです。
なお英語でも、蜜入り部分のことを「ウォーターコア(水の核)」と呼んでいます。
では蜜の部分に価値があると考えるのは、単なる思い込みだったのでしょうか?