音楽が頭にこびりつく「イヤーワーム」現象

ほとんどの人が、「CMのテーマ曲が頭から離れない」など、聴いた音楽が頭にこびりつき何度もリピートされるという経験をしたことがあるでしょう。
まるで耳の中に音楽の寄生虫がとりついたように感じられるため、この現象は「イヤーワーム(Earworm=耳の虫)」と呼ばれています。
特にシンプルでキャッチ―なメロディ、歌詞付きの楽曲、特徴的なビートやリズムの音楽はイヤーワームを発生させやすいようです。
そして近年、音楽業界ではイヤーワームを起こしやすい明るい曲が主流となっています。
しかも若者たちは、ワイヤレスイヤホンやスマホを使って、かつてないほど音楽を聴いているのです。
当然、就寝前に音楽を聴く人も多く、これによって寝る前や朝起きたときでも音楽が頭から離れないケース(睡眠時のイヤーワーム)が生じています。
これが睡眠の質になんらかの影響を及ぼしている可能性は大いにありますね。
そこで研究チームは、これらの点を調査するため、睡眠前の音楽と睡眠の質の関連性を調査することにしました。
寝る前の音楽は、睡眠の質を低下させる
最初の調査には、199人のアメリカ人が参加しました。
その調査結果によると、約33%の人が、「就寝前にイヤーワームを経験したことがある」とのこと。
また普段から音楽を頻繁に聴く人ほど睡眠時のイヤーワームを経験しており、睡眠の質も低下していました。

次にチームは、48人の若年成人を対象に睡眠実験を行いました。
この実験では、すべての参加者が就寝30分前に有名なポップソングを3曲(歌詞付きと歌詞なしをランダムに)聴きました。
そして睡眠中の脳波、血中酸素濃度、呼吸パターン、心拍数、眼球や体の動きを記録し、睡眠の質に与える影響を調査しています。
その結果、寝る前に歌詞なしの音楽を聴いた人は、歌詞付きの音楽を聴いた人に比べて睡眠の質が著しく悪化しました。
それらの人は睡眠効率が悪いだけでなく、寝つきも良くありませんでした。
また就寝前にイヤーワームを経験した人も睡眠の質が悪く、深い眠りから浅い眠りへと変化していたようです。
しかも参加者の4分の1が、頭にメロディがこびりついた状態で夜中に目を覚ましてしまいました。
さて、これら2つの研究は、「就寝前の音楽が睡眠の質を低下させる」という結果において一致しています。
では、睡眠中に絶えず音楽を聴いているわけではないのに、脳が影響を受けてしまうのはなぜでしょうか?
脳は睡眠中にメロディを思い出して自動再生していた
チームが実験で得られた脳波データを分析したところ、睡眠時のイヤーワームを経験した人の前頭葉では、より大きな低速振動が観察されました。
この前頭葉の振動は、脳が記憶を定着させるときに観察されるものです。
つまり、脳が睡眠中に一種の記憶処理として「メロディの自動再生&脳内ネットワークを活性化」させるため、睡眠時でもイヤーワームが発生する、と考えられます。

さて、これらすべての研究結果をまとめると、次のように推測できます。
「就寝前に音楽を聴くと、睡眠中でも脳がメロディを記憶するよう処理し続けるため、睡眠の質が低下する」のです。
とはいえ、「メロディの記憶定着が睡眠の質を低下させる理由」がはっきりと判明したわけではありません。
また今回の結果だけでは、最近よく見かける「睡眠導入BGM」のメリットとデメリットを提出するものとはならないでしょう。
しかし研究チームは「良い睡眠とは、睡眠を優先することから始まる」と述べています。
私たちが効果的な睡眠をとりたいなら、まずは就寝前の音楽をやめ、睡眠を最優先してみるべきなのです。




















