クモは、8本の脚と糸をもつ肉食の生き物で、昆虫ではなくサソリやダニに近いなかまです。世界で53,680種が記録され、南極をのぞく全大陸にすんでいます。網を張るのは約半数で、人に危ない毒をもつ種はごく一部です。
図鑑データ
- 分類
- 動物界 › 節足動物門 › クモガタ綱 › クモ目
- 学名
- Araneae
- 英名
- spider(スパイダー)
- 種の数
- 53,680種(2026年1月の時点)
- 大きさ
- 体長0.37mm未満〜90mm(脚を広げると250mmになるタランチュラも)
- 脚と目
- 脚は8本。目は多くが8つ
- すみか
- 南極をのぞく全大陸。陸のほぼあらゆる環境
- 日本では
- 64の科が記録されている(2018年の分類)
- 食べもの
- 昆虫などの小さな動物(ほぼすべて肉食)
- 寿命
- 多くは1〜2年。タランチュラのなかまは20年以上生きることも
- 長生きの記録
- 43年(オーストラリアのトタテグモのなかま)
クモとは? 昆虫とのちがい
クモは、おしりから糸を出し、毒のある牙で小さな動物をつかまえて食べる生き物です。分類では「クモ目(もく)」というグループにまとめられ、2026年1月の時点で53,680種が記録されています。
「虫」と呼ばれることもありますが、昆虫ではありません。クモの脚は8本で、体は「頭胸部(とうきょうぶ)」と「腹部」の2つに分かれ、触角がありません。サソリやダニと同じ「クモガタ類」のなかまです。
大きさと体のつくり
いちばん小さなクモは南米コロンビアのパトゥ・ディグアで、体長は0.37mmにも届きません。いちばん大きなクモはタランチュラ(オオツチグモ)のなかまで、体長は最大90mm、脚を広げると250mmにもなります。

- 頭胸部:頭と胸がひとつになった部分で、目や口、脚がついています。背中側は1枚のかたい殻でおおわれています。
- 腹部:やわらかい袋のような部分で、細い「腹柄(ふくへい)」で頭胸部とつながっています。うしろの端に、糸を出す「糸疣(いといぼ)」があります。
- 牙と毒:口の前にある1対の「鋏角(きょうかく)」の先が鋭い牙になっていて、獲物に突き刺して毒を注入します。
- 触肢:鋏角のうしろにある、短い脚のようなもの。おとなのオスでは先がふくらみ、交尾の道具になります。
- 目:多くは8つの目が2列に並んでいます。並び方はグループ(科)ごとにちがい、目の数が少ない種や、目のない種もいます。
- 呼吸:腹部に「書肺(しょはい)」という、本のページのように薄い板が重なった肺があります。多くのクモは、気管という細い管でも呼吸します。
画像はイメージです網を張らずに獲物を追うハエトリグモは、とくに目のよいクモです。クモの正面の1対の目は、中の網膜を動かして見る向きを変えられます。ハエトリグモには、昆虫でいちばん目のよいトンボより細かく見分けられる種もいます。2022年には、夜に休んでいる子グモの網膜が、レム睡眠に似た動きをしていることも報告されました。

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なぜ壁や天井を歩ける?
歩き回って獲物を探すクモの多くは、脚の先に「スコプラ」という細かい毛の束をもっています。毛の先は最大1,000本ほどにも枝分かれしていて、表面のごく薄い水の層にくっつくことで、ガラスの壁や天井でも歩けると考えられています。
また、クモの脚には、脚をのばすための筋肉がほとんどありません。体液の圧力を高めて脚をのばすしくみで、ハエトリグモはこの圧力を一気に高め、体長の50倍ほどの距離までジャンプできます。死んだクモの脚が丸まっているのは、この圧力がなくなるためです。
どこにいる? 日本にもいる?
クモは南極をのぞくすべての大陸にすみ、砂漠、高い山、森林、草原、湿地、海岸など、ほとんどあらゆる陸の環境で見つかります。ただし水の中でくらすクモはほとんどおらず、ミズグモが、水中に空気をためた糸の「部屋」をつくってくらしているくらいです。
日本にもたくさんのクモがいて、2018年の図鑑の分類では、日本から64の科(グループ)のクモが記録されています。家の中やまわり、田んぼなど、身近な場所にもふつうにいます。
何を食べる?
クモはほぼすべてが肉食で、昆虫やほかのクモなどの小さな動物を食べます。自分と同じくらいの大きさの獲物までとらえ、大きなクモには、カエルや小さなほ乳類、トカゲ、小鳥などを食べるものもいます。日本でも、沖縄県の石垣島で、日本最大のクモであるオオジョロウグモがツバメを食べていたのが観察されています。
クモの消化管は細く、かたいものを飲みこめません。そこで、獲物に消化液を注入して中身をとかし、液体にして吸いこみます(体外消化)。食べ終わった獲物は、中身のない抜け殻のようになります。

獲物のとり方は大きく2つです。網を張って待つ「造網性(ぞうもうせい)」と、網を張らずに歩き回ったり待ちぶせしたりして飛びかかる「徘徊性(はいかいせい)」で、網を張らないクモはほぼ半数にのぼります。
めずらしい例外もいます。ハエトリグモのなかまのバギーラ・キップリンギは、食べものの90%以上を、アカシアの木がつくる栄養のかたまりからとっている、ほぼ草食のクモです。
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糸と網のひみつ
クモはどの種も糸を出せます。糸は腹部の糸疣から出てきます。体の中には何種類もの糸腺(糸をつくる器官)があり、それぞれ性質のちがう糸をつくって使い分けています。糸の主な材料はタンパク質で、体の中では液体ですが、引き出されるときに固まって糸になります。

網を張らないクモも、歩くときは「しおり糸」という命綱を引いています。敵から逃げようと網から飛び降りても、この糸をたぐって戻れます。糸はほかにも、卵を包む袋や巣づくり、子グモが空を飛ぶための「パラシュート」にも使われます。
よく見る丸い網(円網)では、うずまき状の横糸にだけ粘る液がついていて、放射状の縦糸は粘りません。クモは粘らない縦糸の上を歩くので、自分の網にはかかりません。網に獲物がかかると、その振動で気づきます。

円網はおなじみの形ですが、実は網を張るクモの多くは、円網ではない網をつくります。ヒメグモのなかまが張る、立体的にからまった網などです。
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空を飛ぶクモ「バルーニング」
多くの種では、生まれた子グモが糸を出して風を受け、タンポポの綿毛のように空を飛んで移動します。これを「バルーニング」といい、体の小さな種ではおとなも行います。インドネシアのクラカタウで火山活動によって新しい島ができたとき、最初にやってきた生き物はクモだったという報告もあります。2018年には、空気中の電場もバルーニングのきっかけになることを示した研究が発表されました。

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クモの毒は危ない?
ほとんどのクモは、虫をしとめるための毒をもっています。しかし、人に害があるほど強い毒をもつ種は、世界でもごくわずかです。日本の在来のクモのほとんどは、人の皮膚をつらぬけるほど大きな牙をもっていません。ウズグモのなかまのように、毒腺そのものをなくしたクモもいます。
ほとんどのクモは、自分よりずっと大きな人に向かってくることはなく、近づくと必死に逃げようとします。かみつくのは、素手でつかんだときなど、身を守るときです。20世紀に、クモにかまれて亡くなったと確かに報告された人は約100人で、クラゲに刺されて亡くなった約1,500人よりずっと少ない数です。
注意したいのは、日本に入りこんでニュースになったセアカゴケグモやハイイロゴケグモなどのゴケグモのなかまです。在来種では、カバキコマチグモなどコマチグモのなかまの大型種の毒が強く、かまれるとかなり痛みます。どのクモの毒でも、体質によってはアナフィラキシーショックを起こすことがあるので、素手でさわらないようにしましょう。

反対に、こわいイメージのあるタランチュラ(オオツチグモのなかま)は、強い毒をもつものはまれです。
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寿命と増え方
多くのクモの寿命は1〜2年ほどです。タランチュラなどのなかまは長生きで、飼育下で20年以上生きた例があります。野生では、オーストラリアのトタテグモのなかまのメスが43歳まで生き、記録に残るもっとも長生きのクモになっています(2018年に報告)。
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クモは卵で増えます。オスは交尾の前に小さな網をつくって精子を出し、それを触肢の先にためてから、メスの体に送りこみます。メスは糸で卵をくるんだ「卵のう」をつくり、ひとつの卵のうに数百個の卵が入っていることもあります。多い種では、最大3,000個ほどの卵を産みます。

卵からかえった子グモは、しばらく卵のうの中ですごし、親を小さくしたような姿で出てきます。その後は脱皮をくり返して大きくなります。卵のうから出たばかりの子グモがかたまっているところをつつくと、いっせいに散らばります。「蜘蛛の子を散らす」という言葉は、このようすから生まれました。
子育てと共食い
子育てをするクモもいます。コモリグモのなかまは、生まれた子グモをしばらく背中に乗せて運びます。2018年には、アリに似た姿のハエトリグモのなかまが、ミルクのような栄養のある液を出して子どもを育てていることも報告されました。

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一方で、メスがオスよりずっと大きい種では、オスが近づくとメスに食べられてしまう危険があります。そのためオスは、網の糸をはじいて合図を送ったり、ハエトリグモのように前脚をふってダンスをしたりと、さまざまなやり方でメスに近づきます。オーストラリアのセアカゴケグモでは、60%をこえるケースで、メスが交尾のあとにオスを食べてしまいます。
名前の由来と、人とのかかわり
「クモ」という名前は、巣を「組む」虫から来たという説や、「黒い」「隠(ごもり)」から来たという説があります。英語の spider は「糸を紡ぐもの」という意味の古い言葉から来ています。
クモは農作物の害虫や、家の中のハエ・蚊・ゴキブリなどを食べてくれるため、「益虫」とされてきました。田んぼでは、アシナガグモなどの網を張るクモや、コモリグモなどの歩き回るクモが、害虫を減らすのに大いに役立っていることが知られています。
日本には昔から、朝にクモを見ると縁起がよく、夜に見ると縁起が悪いという言い伝えがあります(地方によってちがいます)。コガネグモなどを戦わせる「蜘蛛合戦」という遊びも伝わっています。
軽くて強く、よく伸びるクモの糸は、人工的につくる研究が長く続けられてきました。2013年には、山形県の企業スパイバーが人工クモ糸の量産技術を開発しています。
大昔のクモ
体がやわらかいクモは化石に残りにくく、見つかっている化石の多くは琥珀(こはく)に閉じこめられたものです。それでも、化石から1000種近くが記載されています。琥珀の中には、交尾や獲物をとらえるところ、糸を出すところが残っているものもあります。

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よくある疑問
- クモは昆虫ですか?
- いいえ。昆虫とは別の「クモガタ類」のなかまで、サソリやダニに近い生き物です。脚が8本あること、体が頭胸部と腹部の2つに分かれていること、触角がないことが昆虫とちがいます。
- クモの脚は何本?
- 8本(4対)です。脚のほかに、口の近くに短い脚のような「触肢」が1対あります。
- クモはなぜ自分の網にかからないの?
- 円網では、粘る液がついているのはうずまき状の横糸だけです。クモは粘らない縦糸の上を歩くので、自分の網にくっつきません。
- 家にいるクモは益虫?
- 家の中やまわりにいるクモの多くは、ハエや蚊、ゴキブリなどを食べるため、益虫とされています。ほとんどのクモは人を自分から襲うことはなく、近づくと逃げようとします。
- クモの寿命はどのくらい?
- 多くのクモは1〜2年ほどです。タランチュラなどのなかまは長生きで、飼育下で20年以上生きた例があり、野生では43歳まで生きたトタテグモのなかまの記録があります。
- 日本に毒グモはいる?
- 人に強い症状が出るおそれがあるのは、日本に入りこんだセアカゴケグモなどのゴケグモのなかまです。在来種ではカバキコマチグモなどの毒が強く、かまれるとかなり痛みます。見つけても素手でさわらないようにしましょう。
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参考文献
- Mason LD ほか (2018) The longest-lived spider: mygalomorphs dig deep, and persevere. Pacific Conservation Biology
- Morley EL, Robert D (2018) Electric Fields Elicit Ballooning in Spiders. Current Biology
- Chen Z ほか (2018) Prolonged milk provisioning in a jumping spider. Science
- Rößler DC ほか (2022) Regularly occurring bouts of retinal movements suggest an REM sleep–like state in jumping spiders. PNAS
- Wikipedia「クモ」(日本語版)
- Wikipedia「Spider」(英語版)
- Wikidata「Araneae」(Q1357)
表紙の写真: Ummigarba(CC BY-SA 4.0) / Wikimedia Commons
ほかの写真のクレジットは、それぞれの写真のページにあります。
この図鑑は、参考文献の資料をもとに、ナゾロジー編集部がまとめています。












